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フェアトレードが先住民の森を救う!? - フィリピンニュース, 現地生活 最新情報発信
   
  フェアトレードが先住民の森を救う!?
グローバル・コンテンツという会社が運営する、フィリピン人とフィリピンを愛する日本人の方向けの携帯サイト「フィリピンウェブ」に反町が寄稿した記事です。グローバル・コンテンツさんの了承を得て転載させていただきます。 
グローバル・コンテンツについては、こちらのサイトをご覧ください。フィリピン好きの人にはなかなか通なタメになる情報がたくさん詰まっているサイトです(1ヶ月315円)。


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世界最悪の森林破壊の現状 

米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Science of the USA)によると、1990年から2005年の間で、国の面積に対する森林面積の割合が世界でもっとも急速に減少したのはナイジェリアとフィリピンなのだそうだ。なんとも不名誉な世界一。16世紀には国土の80%を占めていたというフィリピンの森林面積は、第二次世界大戦後の1945年のデータでは約50%、2000年には20%を割ったといわれている。
マニラを出てルソン島を北上しても、行けども行けども国道の両側はハゲ山。ルソン島北部の穀倉地域に水を供給している13の川の水源をもつコーディリエラ山岳地方に至ると、さすがに森が目に付くが、それとてフィリピンDENR(天然資源省)の発表によると、森林面積は665,796ヘクタールで、山岳地域の総面積180万ヘクタールの約36%。しかも、最近(といっても2005年~2008年のデータですが)の3年間で失われた森林は950ヘクタールに上るとか。
世界中で環境問題が取りざたされ、二酸化炭素削減、地球温暖化防止のために森林保護の重要性が叫ばれている中で、またまたフィリピンは劣等性の筆頭だ。

どうして、森林破壊が進んでいるのか?

 コーディリエラ山岳地方の森林消失の大きな原因は、乾季における山火事だ。コーディリエラ山岳地方の中心、バギオ市から、山岳地方に入っていくハルセマ・ロード沿い(ベンゲット州)は、見渡す限りに野菜の段々畑が広がり森の姿はほとんど消している。5時間ほど車で走るとマウンテン州に入るが、「商業野菜の販売で潤っているお隣りのベンゲット州に習え」とばかりに焼畑の拡張が盛んで、乾季の旅で目の当たりにする山火事は優に10は超える。
山火事の原因は何か? 
なんと、人が意図的に火を入れることなのだそうだ。コーディリエラ山岳地方に暮らすのは、イフガオ、カリンガ、カンカナイ、イスネグなどの先住民族たちである。彼らは伝統的には、棚田での米生産、狩猟、森の産物(山菜、果物、きのこなど)の採取、焼畑耕作で、暮らしに必要なほとんどすべてのものを得てきた。いわば森に生かされているのが彼らの暮らしであり、森の消失は彼らの暮らしに壊滅的な打撃を与えるはずだ。なのに、なぜ?

 


 原因のひとつは、国の森林保護政策にある。フィリピンの森林伐採のピークは1968年というが、戦後のフィリピンの森林保全政策の失敗と、マルコス政権下で権力と癒着した木材伐採権システムのあり方が森林伐採を後押しした。1986年のアキノ革命後、都市部の政治活動家、環境活動家、NGOなどの働きかけで、木材全面伐採禁止が実施された。しかし、山岳地方の先住民族の暮らしになどまったく配慮しない形での全面禁止は、かえって不法伐採を増長したばかりか、森林の保全に関する政府機関に汚職がはびこり、森林破壊のスピードはかえって速まったといわれている。
 森とともに生きてきた先住民族が伝えてきた森林保全システムでは、家族単位で(あるいはコミュニティで)育ててきた木は、次世代もそのまた次世代も、暮らしのために利用できることになっていた。暮らしに欠かせない木だから、先住民は木を育ててきたし、切った木の代わりになる木を植えてきた。ところが、法律では自分で育ててきた木を1本切るにも、面倒な届出をし、森林税を払わなくてはならない。以前は、家族が使わない余分な成熟した木は、製材して販売し、先住民の貴重な現金収入源となっていた。しかし、木材伐採が一切禁止となってからは、国道のあらゆるところにチェック・ポイントが設置され、違法な木材の運搬が取り締まられることになった。この国のお国柄、ここでも汚職がはびこる。伐採の全面禁止は、かえって政府中枢がコントロールできない不法伐採を増長する結果となったのだ。
 一方、山岳地方に住む先住民族の暮らしにも徐々に市場経済が浸透し、自給自足から現金収入の必要な暮らしに変わりつつある。森林から材木を切り出して販売するのは不法行為だが、森に火を入れ山火事を起こし、木のなくなった斜面に段々畑を作って野菜栽培を開始すれば、野菜は合法的に販売でき現金収入につながる。日々の暮らしに精一杯の先住民にとっては、背に腹はかえられない。先祖代々が大事にしてきた山に火を入れることになる。森林消失による環境への影響、森林がなくなったことによる川の水不足が、低地の稲作に及ぼす影響など考える余裕などあるわけもない。かくて、森林には原因不明の山火事が頻発し、世の中の環境保全に対する意識の高まりと逆行する形で森林破壊はすさまじいスピードで進行しているのだ。

 


 森林破壊を止めるのはお金を生む森作り!?

 進行の止まらない森林破壊に歯止めをかけるために考案された政策がCBFM(Community-Based Forest Management=コミュニティ・ベースの森林管理)。森林を25年間、無償でコミュニティに貸し、住民自身が森林管理を行えるというものだ。そこで注目を集め始めたのが、アグロフォレストリー(森林農法)だ。森林樹種の間に、果樹などの換金作物が採れる樹木を植え、さらに樹木の下にイモ類、ショウガなど日陰でも育つ作物を植える。つまり、森林から収入が得られるようなシステムを作り、住民の現金収入を確保し暮らしを助けながら、同時に森林保全を行なおうというものだ。
 1995年に現行のCBFM法が制定されて以来、フィリピン全土で300万ヘクタールがCBFMエリアに制定され、JICAを含むさまざまな国際機関やNGOが資金援助をして、アグロフォレストリーを推進してきた。
私が主宰する環境NGOの活動のひとつが植林だが、現在、コーディリエラ地方で行っているすべての植林事業がアグロフォレストリー事業だ。標高700m以上の高地ではおもにコーヒーを換金作物として植え、低地ではカカオやランブータン、ランソネス、ライチ、マンゴスティンなどの果樹を植えている。また、住民からの要望があれば、手工芸品作りの原材料となる竹や藤(ラタン)を植えることもある。
フィリピンのハゲ山に緑の森を復活させるために始めた環境NGOの活動だが、先住民族の暮らしの現実に触れたとき、持続可能な森作りに欠かせないのは「お金を生む森作り」だということに行きついた。しかも、外から人がやってきて、ずけずけと先住民の土地に入って植えた木では、誰も育てない。先住民の人たち自身の手で植え、育ててもらうことが、この地における森作りでは欠かせないのだ。
 

           ↑CGNの苗木場で芽を出したコーヒーの木

アグロフォレストリーの産物をフェアトレード

 先住民族がアグロフォレストリー農法でコーヒーや果樹やカカオを作り、長い年月をかけて収穫までこぎつけたとしても、その産物をきちんとよい値段で販売できなければ、先住民族の暮らしの向上には役立たない。先住民族の多くが学歴が低く、マーケットへのアクセスもなく、商売の交渉の能力も備えていない。中間業者のいうままに、手をかけて育てたコーヒーやカカオを買い叩かれることも十分ありえる。
そこで、必要になるのがフェアトレード。日本でも最近、一般的になりつつあるフェアトレードだが、要は、生産物を適正な値段で農民から直接、継続的に買い取る交易システムのこと。また、生産地の環境や労働者の就労条件などもチェックし、収益の一部は生産者の生活環境の向上に還元していくことになっている。中間業者が大きく儲け、実際に生産に関わっている農民の暮らしが改善されないという状況を改善するのが目的である。
フィリピンでは、まだまだフェアトレードという概念は一般的ではないが、コーディリエラ山岳民族のコーヒーを扱う「Cordillera Coffee」が Coffee A.I.D. (Assistance for Indigenous Development)という団体を設立し、コーヒーの適正価格での買い取りとフェアトレード・コーヒーとしての販売を始めたり、ミンダナオ島ダバオ市でも先住民族が作ったアラビカ・コーヒーを扱う「Coffee for Peace」がフェアトレード・コーヒーの輸出を始めている。
私たちのNGOでも植林事業で植えてきた5年ほど前に植えたアラビカ・コーヒーの苗木が順調に育って収穫が始まっており、収穫物を農民の暮らしの向上に結び付けていくよう、コーヒー農民を中心としたフェアトレード組合の設立を準備中だ。森の滋養をたっぷり含んだコーディリエラ山岳民のコーヒーが、日本の消費者のみなさんの元に届くのもそう遠くない日だと思う。
 

     ↑CGNのフェアトレードコーヒーも試販売を始めています。

先住民の手仕事のフェアトレード

 手工芸品のフェアトレードには、フィリピン各地で活動する日本のNGOの多くも関わっている。女性や障害者支援、あるいは貧困解消のために、地元にふんだんにある自然素材やリサイクル・マテリアルなどを使ったクラフト品作りを技術指導し、デザインのアイデアを与え、きちんと生産者の利益につながり自立を促すように適正な価格で買い取り、フィリピン国内や日本で販売している。また、フィリピン人の手工芸品の生産者が集まってフェアトレード行おうという団体もたくさんあるようだ。
コーディリエラ山岳地方の先住民族たちの中には、今も伝統のカゴ編み、手織り、木彫りなどの手仕事の技術を伝える村があり、それらの技術は貴重な文化的財産として後世に伝えられていくべきものだ。しかし、当の先住民族たちは、その価値に気がついていない。安くて軽くて便利な中国製の生活用具が大量にフィリピンに輸入されるようになってから、山の中の村でさえほとんどの生活用具が中国製品に取って代わられつつある。面倒なカゴ編みや貴重な樹皮布織りは古臭く面倒な仕事と若者たちにうとまれ、継承者は減る一方だ。
ここでも、その貴重な伝統文化を存続させていく唯一の手段が、きちんとその手仕事の価値を認め、その価値に見合った値段で買ってあげること。あまりに現実的な考え方で、書いている私自身落ち込みそうになるが、「これは貴重な文化ですから継承していってください」なんてきれいごとを並べても、その日の食べ物に困窮している先住民が従うわけもない。この「すばらしいカゴをこの値段で買いますよ」と約束し、前払い金をきちんと手渡して「本気」を示さなければ、誰も作ってくれないし、技術を受け継いでいこうという人も出てこない。
日本で沖縄やアイヌの人々の伝統文化が今になって見直されているように、フィリピンの人たち自身がコーディリエラをはじめとする先住民族の伝統文化の価値を見出す日がきっと来る。そのときに、もう貴重な手仕事の技術が伝えている人が一人もいないということなどないよう、手仕事の価値を認められる都市部の住民や私たち外国人ができることは、きちんと買い続けてあげることだと思う。それが、おのずとフェアトレードにつながっていく。

 

    ↑アパヤオ州ティンギアン族の二重編みのかご。失われつつある手仕事です。

 

    ↑イフガオ州カンブーロの樹皮布を織れるおばあさん。
     わずかな人しか伝統も技術を伝えておらず、
     しかもほとんどがお年寄りです。
 




冒頭に上げた米国科学アカデミーのデータによると、1990年から2005年の間で、森林面積の割合がもっとも早く拡大したのは、ベトナム、スペイン、そして中国なのだそうだ。同じアジアのベトナムや中国にできて、フィリピンにできないわけがない! ルソン島最後とも言われるコーディリエラ地方の先住民の森を守ることが、ひいてはフィリピン全体の人々の暮らしも守ることになる。フェアトレードを通してたくさんの人々の手を借りながら、先住民族の森を守っていきたいと思っている。

環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク」
[ホームページ]http://cordillera-green.net
[ブログ]http://cordillera.exblog.jp

フィリピン山岳民族のフェアトレード「カラバオ・ママ」
[ブログ] http://carabaomam.exblog.jp/

参考資料
The Forest Identity(森林減少の終焉は近い?)
http://www.helsinki.fi/press/worldforests/Forest_id_news_Japanese.pdf
  Homepage: http://www.ph-inside.com
Updated: 2010/10/12

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