パラワン島へ旅行をした。パラワン島というのは南シナ海の真っただ中、フィリピンの最西端に位置する細長い島で、長さで比較するとセブ島の2倍以上あり、言語的には中央タガログ圏に属する。

中国が南シナ海域に次々と不法に岩礁を埋め立てて造った軍事基地のある島とも近く、フィリピン側と領有権を巡って角の突き合わせている島もパラワン島から近いが、パラワン島そのものは中国の影響は直接にはない。
政治的にはきな臭い位置にある島だが、パラワン島はフィリピン列島から離れているために、固有の動植物が多く生息し、フィリピンに残された最後の秘境ともいわれていた。
しかし、近年は観光開発が激しく、昨年半年間も強制的に閉鎖されたフィリピンでも一、二を争う著名なボラカイ島と同じく環境破壊が著しく、パラワン島で最も有名な北端にあるエル・ニド地域も同じように閉鎖の話も流れたが、今のところは免れている。
このエル・ニドを今回の旅の目的地にしたが、セブからはパラワン島の中心都市プエルト・プリンセサ市に直行便が飛んでいて、その飛行時間は1時間少々でマニラへ行くのと変わらない距離にある。
プエルト・プリンセサ市はパラワン州の州都になり、人口は30万人に近づいているからかなりの大都市で、昨年9月にはフィリピンのショッピング・モール最大手のSMが市内にモールをオープンしている。
パラワンには20年近く前に初めて行き、その頃はまだまだ観光地としてはこれからの島で、ヴェトナムからのボート難民を収容した場所があり見学したが、その難民収容所は既に閉鎖されている。
2度目は5年前で、その時は世界遺産に指定されていた『地底川』を見物したが、地底川そのものは『新世界七不思議』に選ばれたようになかなかの奇観であったが、この世界遺産指定からパラワン島は観光開発が急激に進んだ。
その中で、エル・ニドはかなり昔からリゾートとして開発されていて、小生がマニラへ初めて行った40年近く前でも、マニラから専用機で訪れる高級リゾートと宣伝していたが、そのツアー料金は当時からかなり高く簡単には行ける場所ではなかった。
最近はエル・ニド空港へ直行便がセブからも出ていて所要時間は1時間少々で行けるが、運航会社は小さく料金も高く、通常はプエルト・プリンセサから陸路でエル・ニドへバスや小型ヴァンで行くが、それでも5~6時間はかかるから、かなりの長旅になるが料金の安さからこの陸路を取る観光客が多い。
エル・ニドについては稿を改めて書きたいが、欧米人には名前が鳴り響いているのかかなりの姿を見るが、天気の悪いせいもあったが写真で紹介されるような秘境の楽園ではなく、俗化されたフィリピンの単なる一リゾート地であった。
さて、エル・ニド滞在を終えてプエルト・プリンセサに戻り次の日に搭乗する便はフィリピン航空の昼近い便で、時間的に余裕があるので市の郊外にある『イワヒグ刑務所』へトライシクルをチャーターして行くが、この刑務所広大な農場を持ち、塀のない刑務所として有名で、刑務所見物が市内ツアーの一つに加えられている。
刑務所見物を終えて、余裕を持って飛行場に直行し、セブ行きの搭乗手続きをし待合室に入り、搭乗便を待つがやはり欧米人の姿が多く、パラワン島のリゾートからセブ島のリゾートへと向かうのが人気があるようだ。
フィリピン航空のセブ行きの飛行機もマニラから飛んできて、順調かと思ったがその後動きはなく、既に搭乗時間は過ぎ、やはりフィリピン航空の『PAL』のALはAlways LateのALかと改めて思っていると、乗客と係員が何やら話している。
その数が増えてきて、何やらおかしな具合になって係員は機体のトラブルがあって、マニラからメカニックを呼び寄せていると言うが、こういうことはアナウンスするなり掲示するべきと思うがこの国はそういう点はどうにもならず言うだけ無駄である。
メカニックを呼んでいると聞いて小生はすぐにこれは欠航だなと思ったが、待つしかなく、その内昼食のパック弁当が出ると言われ、昨年セブからマニラへ行った時に4時間半遅れた時にパック弁当が出て、鳥の唐揚げとご飯だけのパックを連想した。
ところが、弁当を配ろうという寸前に欠航が決まり、乗客はチケット・カウンターに行ってくれとの指示が出、こうなると早い者勝ちでカウンターへ急ぎ足で行くが、当方はセブに帰るだけなのでそれほど切羽詰まった感じは持たない。
一方、欧米人などの観光客は欠航となるとその後の予定が全て狂い、中には乗り継ぎ便の人もあり、カウンター前は苦情を言う者、相談する者でカオス状態で、中には他の航空会社に振り替えられないかと二股をかけて交渉している者もいる。
その中でパック弁当【写真】と水が配られたが、案の定鶏のから揚げとご飯で野菜の付け合わせがあったのが少し良かった程度で、並んでいる関係で立って食べている人が多かったが、順番札を渡すなどもう少し何とかならないか。
こういう突然の欠航は空港職員も慣れていなくて、なかなか列は進まないが、トラブルが治ったら搭乗する人と、本日は諦めてプエルト・プリンセサに泊まる人に分かれるが、小生達はどうせ飛ばないであろうと思って泊まる方を選んだ。
こういった航空会社の都合で欠航した場合、航空会社の責任で全部賄うようになっていてホテルに泊まれるが、その昔アフリカでやはり欠航して、泊まっていたホテルに戻ってその時の次の便は3日後であったが、飲み食い全部航空会社持ちであったことを想い出した。
そうして、空港近くの中級ホテルに送られるが、室内で休んでいた夕方近くに8時までにチェック・インすれば治った飛行機に搭乗できるとの連絡が来て、慌てて荷物を纏めてホテルのヴァンで空港へ向かう。
ところが空港についても本当に飛ぶのかどうか分からず、待っている間にやはりセブから来た夫婦が諦めてホテルへ泊まると言うので、小生達もそうしようということになり再度カウンターで交渉し、ホテルを手配してもらう。
手配してもらったホテルはかなり日本食レストランを持ち、年越しそばがなかったので妙な寿司セットを食べ、2018年の年越しはここかと部屋で過ごしていた12時少し前にホテル上空を轟音を立てて離陸する飛行機があり、これは搭乗するはずのセブ行きの便ではないかと思った。
思えば、飛行中に年が改まる訳で、フィリピンの国内便としては稀有な搭乗であり、もしかするとパイロットも2年越しの飛行を狙って飛んだのかと思わなくもないが、2018年プエルト・プリンセサ飛行場最後の飛行機となったのは確かである。
翌日、前日の騒ぎなど関係ないようにセブ行きの搭乗手続きは終えるが、並んだ顔ぶれを見ると昨日見かけた姿もチラホラ見え、意外に昨深夜の便に搭乗しなかった人が多いことが分かった。
そうして搭乗した席は一番後ろで、航空会社持ちでホテルに泊まった搭乗客はそうなるのかと思ったがそれは考え過ぎで、パラワン往復の航空代金を遥かに超えた赤字の出費だから航空会社も面白くはないであろう。
それにしてもフィリピン航空の基本的な対応、即ち乗客に状況を知らせるシステム、教育がなっていないのは確かで、いくら会社持ちでホテルなどを手配しても、肝心なところが疎かで改善する必要がある。

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