セブで『盆踊り』と称したイヴェントが行われるのは今年で5回目だという。そういう催しがあるのは知っていたが、あまり興味はなく1度も行ったことはない。しかし今年は拙宅から歩いて行ける場所で開催されるので家人と共に行ってみた。
 【写真-1】
この催し何か事情があるのか毎年会場が変わって、今年はマンダウエ市にある新興ショッピング・モールの裏側で開催したが、この敷地には40階を超えるようなコンドミニアムが近々建てられる予定で、来年もどこかへ会場が移りそうだ。
さて、陽が落ちて涼しくなって出掛けたといいたいが、今年は例年にない暑さの年で、年中暑いフィリピンでも今年は猛暑注意報が出たくらいだから、昼間の暑熱が落ちずこんなにフィリピンは暑かったのかと、30年近く住んでいて改めて感じる次第であった。
この催し、セブ日本人会が主催していて、後援に日本大使館や国際交流基金、フィリピンの観光省など公的機関が名を連らねその他企業や団体などかなりあり、単純に夏の夜の盆踊り大会という枠を超えている。
小生自身は盆踊りより、その時出る屋台や夜店に期待して行ったが、入り口で50ペソを徴収された。フィリピンはこの手のイヴェントは無料だと人が押し掛けて終止が付かなくなる恐れから有料にしたと好意的に考える。
さて、期待した屋台と夜店だが、テントを張ってそれなりに数は多かったが、たこ焼き、お好み焼き、ラーメン、焼き鳥、アイスクリーム程度で、その他の出店も会場に来るフィリピン人目当ての人材派遣業とか、得体の知れぬ日本のNPOやあと他に何があったかなと思うような、催しの規模の割には中味は貧弱。
それでもたこ焼きを手始めに食べるが中味はイカで、フィリピンはたこ焼きブームになって専門チェーン店もあるらしいがこんな内容で大丈夫かという代物。次にお祭り定番の焼きそばを期待して別の店で頼むが、日本の焼きそば風にはなっているが塩辛過ぎ。これは日本人の舌に合わないという話ではなく、フィリピン人も呆れる焼きそばであった。
同じ所で見た目は日本のおにぎりソックリの海苔を付けた『しゃけのおにぎり』のあったのでそちらも買うが、米は日本米風で食感は悪くないものの塩味は全くなく、おにぎりは塩を手に付けて握る基本も分からないのかと正に噴飯もので、中味のしゃけも味のない気の抜けた代物であった。
家人は他の店で『ラーメン』と称するものを頼むが、どう見てもインスタントのカップ・ラーメンのほうがマシな感じで、こんな味のラーメンを出していたら、日本のラーメンの評判が悪くなり、しかも小さなカップで100ペソとはボッタクリではないかと思った。
こういうどうしようもない味の店ばかりで、このイヴェントには申込みし出店料を払えばだれでも店を出せるようだが、主催者はどういうものをどのような味と値段で出すか出店者をチェックする必要があるのではないか。でないと、やがて不評が溜まって飽きられると思うが、お気楽な催しだからそこまで考える必要ないか。
写真-1は会場に設けられたステージで、この上で各種のショーが行われていた。特にコスプレ・ショーは盛況なようで、出場者がそれぞれのコスプレで会場を闊歩。コスプレというのはアニメと同じに日本発の文化というが、文化というにはおこがましく『お遊び』にしか過ぎない。
盆踊りと銘打っているが、全体に地元フィリピン人のためのお祭りといって良く『ヨサコイ・ソーラン』もフィリピン人グループが大漁旗まで自作して披露し、いくつものフィリピン人ダンスが続くが、ヨサコイ・ソーランは踊りの抜群に巧いフィリピン人にしては覇気のない踊り方で、日本的な踊りはリズム的に不得手なのかなと思った。
 【写真-2】
日本から来た太鼓グループが演奏し、メンバーの一人が達者な英語で説明しかなり盛り上がったが、10人近いメンバーを日本から招くとはお金もずいぶんかかるなとつまらないことを思ったが、50ペソの入場料で聞けたから良しとする。
さて肝心の盆踊りだが、写真-2の中央にあるステージの周りで輪になって踊り出したのは、そういった各種出し物が終わってからで、写真-1で法被を着て頭は豆絞りの日本と同じような格好の子ども達がステージに乗り、その上には浴衣を着た大人が踊る。
最初に流れた曲は『東京音頭』で、この東京音頭は1933年に『丸の内音頭』として作られ、時代は昭和8年、ドイツでヒットラー政権発足、日本が国際連盟脱退という軍国主義にまっしぐらの年だが、今の天皇が生まれた年でもある。
翌年に『東京音頭』として改題し、歌詞も変えたところ大ヒット。以降戦後も盆踊りの定番曲となり、その軽快なリズムから東京の人間には耳に馴染んでいて、東京を本拠にする野球やサッカーの応援歌になっている。
東京音頭の曲が流れ、踊る姿を見て海外に30年以上住んでいて初めて聞いたと思うが、それなりに感動的で、ステージで踊る人もかなり練習したなと思え、そこだけは盆踊り気分だが、ステージの周りに輪になって踊る人は来場者の割には目立たなかった。
しかも、東京音頭が続けて3曲流れ、次は『ドラえもん音頭』が2回流れて、それで終わってしまい、盆踊り定番曲の炭坑節など流れるかと思ったが、それはなく盆踊りと銘打つにはかなり貧弱。
次にステージでファイヤー・ダンスが踊られて、パフォーマンスは終わり、文字通り打ち上げの花火が上げられ今夕は終わったが、その花火も住宅や工場の密集地で打ち上げられて大丈夫かなと思わなくもないが、見る方は気楽なものでその豪快さ、美しさに見とれる。
こうして、土曜の夜の盆踊りは終わったが、後で聞いてみると昼間の3時から開催されたという。続けて日曜日も行われるが土曜日のこの調子で開催されるだろうし、小生としてはこの夜の分で充分。
といろいろ書いたが、こういった催しを企画、準備した裏方は大変と思うし、日本人会役員の知っている顔も見て、内容の善し悪しはともかくご苦労様のことで、小生の様な外野があれこれいう筋合いではないか。

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