新型コロナ・ウィルスが次々と変異して行くのはウィルスの性質上予測されていたが、その変異株の呼び方を当初は発生国の名称を付けていたが、差別を助長するとWHOがギリシア文字を採用し、アルファだベータだと耳慣れない呼び方になった。
【写真はセブを代表するサン・カルロス大学本校】
何故英語のアルファベットを採用しなかった理由は分からないが、科学の世界では結構ギリシア文字で表現すること多く、素人目にはただ偉そうに聞こえるから使っているとしか思えないが、ギリシア文字はアルファベットより2字少ない24字で作られている。
ギリシア文字24字で収まるのかと思うくらい猛威を振るっている新型コロナだが、日本では今までの老、中高年から若年層に感染は拡がって、今や小中学生の年少者にも及び、その結果夏休みの延長、あるいは夏休み明けの休校となる事態にまでなった。
実際に夏休みが延長されたのは自治体によって違い、小中学校の10%、高校で20%、その期間も平均で5日というから1週間の延長になるが、夏休みが延長されるなどこどもにとっては青天の霹靂で、宿題をやっていなかった者には朗報だが、さすがに長い休みにはこどもも倦むし親の方にも負担がかかった。
それでも日本は通常の授業形態である対面授業が行われ、教育現場は以前の形に戻っているが、ここフィリピンは昨年の3月に学校が閉鎖されてから大学などの一部を除いて一度も学校は再開されず、既に1年半に及ぶ学校の閉鎖は学ぶこども達に大きな影響を及ぼしている。
学校閉鎖といってもオンラインなどで授業は行われているが、本来の対面授業は止まったままで、これだけ長い期間対面授業をしていない国は世界でも稀で、教育当局は10月には学校の対面授業を始めたいとしているが、大統領がワクチン接種が進まない限りは認めないと言明していて、そのワクチン接種は遅々として進まず見通しは暗い。
ここでフィリピンの学校制度に触れたいが、義務教育期間は幼稚園1年、小学校6年、高校6年で計13年間、日本の義務教育9年より4年も長いことに驚くが、フィリピンは義務教育といっても実際は行かなくても罰せられず、そのためなのか公立校でも毎年学ぶためには入学手続きをする必要がある。
高校6年と書いたが、高校は同一校内に2年のジュニア・ハイ・スクールと4年のシニア・ハイ・スクールという区別があり、日本でいう中学校がハイ・スクールに含まれていて、12歳でハイ・スクールに通っていると聞いてびっくりしたこともあった。
毎年入学手続きをする理由だが、フィリピンは人口過剰でしかも平均年齢が日本の半分の23歳、当然義務教育対象者も毎年急増する一方で、そのために学校施設や教員確保が間に合わず、学校によっては数千人を抱えるマンモス小中学校は珍しくないため、毎年入学者数の動向を計るために行っているという。
また、経済的理由で学校に通うことが困難な者も多いために、毎年入学手続きが必要となり、実際20歳で高校生というのは珍しくなく、こういう生徒は金を溜めては学校に行き、金がなくなるとまた働くということを繰り返すが、フィリピンは学歴偏重の国なので苦学してまで卒業を目指す人は多い。
入学時期は欧米と同じ9月から、卒業は3月下旬で4月、5月は夏休みになるが確かにこの期間は年中暑いフィリピンでも格別に暑く、しかも地球の気候変動の影響のため年々暑さが増し、小生のように長くフィリピンに住んでいても堪える。
次にフィリピンの学期区分だが、1年は4学期に分かれていて1学期が6月から8月中旬、2学期が8月中旬から10月、3学期が11月から12月、4学期が1月から3月までとなっていて、春休みとか冬休みといったものはないので年間の授業日数は日本と変わらない200日となっている。
ただし、学校によっては児童、生徒が収容しきれないために午前と午後の2部制に分けているところも多く、そうなると総時間数ではかなり少ないと思うが、資料がないのでどのように計算されているのか分からないが、土曜日も授業をやって時間数は満たせているのかも知れない。
ちなみにかつてのフィリピンは小中高で計11年しかなく、大学入学の国際基準の12年を満たず問題はあったが、アキノ政権(子)の時代に有無をいわせない学制改革で12年制に変更し、日本のように4月入学を9月入学にするかどうかと些細なことで揉めている国とはかなり違う。
さて、1年半もの学校閉鎖中は家庭内でオンライン授業、学校が用意するプリントでの自己学習、その二つの組み合わせの授業と三つに分かれるが、都市部はともかく多くを占める地方はインターネット環境は悪く、都市部でもネット代が払えない、パソコンやスマホ自体を持っていない生徒が多く、全体の10数%しかオンラインで授業を受けられず、持てる者と持たざる者との学力の格差は広がっている。
このため、学校で用意したプリントで自習し、それを学校で採点という学習法が地方では多く取られているが、学校は学力だけではなく社会性を養う場でもあるので、教育効果という点では問題があるし、そのプリント自体も当人に代わって親や兄弟が記入することも多いという。
ただし、このプリント学習では親や兄弟が学校に事情があって行っていなかった家庭において、このプリントで改めて勉強し直しているという笑えない例もあって、学校側も事情を承知し黙認しているという。
ちなみに日本の場合、夏休み延期や休校中の学習指導について、最も多かったのは『教科書や教材を活用』で、小学校54%、中学校60%、高校で59%と半数を超え、『同時型のオンライン授業』は小学校27%、中学校31%、高校で33%となっていて、日本の学習環境がフィリピンよりかなり良いことが分かる。
さてフィリピンではコロナ禍で学校へ行くことを止める例が増えていて、今年学ぶ児童生徒の内270万人余が入学をしないことが明らかになり、これは全体の10%減となり、経済的理由と対面授業禁止のために教育を受ける権利が疎外されている。
フィリピンは私学のレベルが高く、富裕層は勿論低所得層でも無理して私学へ入れる傾向があって、その結果全児童生徒の内10%が私学に通っているが、こちらもコロナ禍で経済的打撃を受けた家庭が多く、今年度から入学手続きをしないで公立学校に転校するのが激増している。
その数はおよそ200万人に上っているといい、前年と比較すると48%もの減少でこうなると、ビジネスとして私学を経営していたところは倒産の恐れもあり、元々富裕層相手の私学でも学費値上げをする必要があり、増々富裕層有利の教育環境が出来上がって行く。
さすがに長期間の対面授業禁止の措置は問題が多過ぎると、教育現場からは不満が出ていて、校内感染を怖れる大統領に対して試験的に対面授業を行うパイロット校を作って様子を見て、全面的に対面授業復活か禁止継続を決めたらどうかという提言も出ているが、大統領は聞く耳を持っていない。
こういう事態が1年半も続き、しかも未成年の外出は禁止されているために家庭内で鬱屈した時間を送り、しかも親はコロナ禍で失業中というところも多く、児童生徒の鬱や自殺が多くなり、この面でも学校を再開してこどもの人権を守るべきという声も高い。
また、コロナ禍で世界中の国では出生数が減っている中、フィリピンは出生数が急増した国だが、未成年の間にも望まぬ妊娠が増えていて、そちらのケアも学校が開いていたらある程度防げたと指摘されているが、毎日2万人も新規感染者を生んでいるような現況ではそういった声はかき消されている。

|