 フィリピン議会はアメリカに倣って上下院2院制を取り、上院は定員24名、3年毎に半数の12人が改選される。
歴代大統領の多くが上院議員経験者で名実共に政治エリートして位置付けられているが、選挙は全国区方式のため、知名度の高い芸能人などが上位当選し易くなっている。
前々回アロヨ政権下の2007年に実施された上院議員選挙開票について疑惑が再発覚し、追及の手が激しくなっている。
これは関係者による投票集計用紙の改竄、すり替え行為の暴露、当時の選挙管理委員会の委員が逮捕される事態になっているが、この動きを受けて最下位当選(得票数1,100万票強)したズビリ議員(写真)が8月3日に辞職表明をした。
この時の開票疑惑は反アロヨ側の上院立候補者の得票数をミンダナオ島の自治体を中心に『ゼロ』にしたりするなどのアロヨ陣営に有利になるように得票数操作が行われた。
アロヨ陣営に属したズビリ議員は『不正開票に関与はしていないが、名誉を守るため』といった理由で辞職表明しているが、仮に関与していないとしても、現在43歳の若さのため次回上院選(2013年)に再立候補、有利にするための布石との見方もある。
一方、反アロヨ側陣営で次点に終わったピメンテル候補はその差約1万8千票差だったために、選挙後に異議を申し立てていて目下審査中で、この辞職事態を受けて『開票不正がなければ当選は私』と早くも動き出している。
なお、在任中の上院議員辞職は前例がないために次点者が繰り上がるかは不明で、繰り上がっても任期は次回上院選までと見られている。
ズビリはミンダナオ島内陸部にあるブキドノン州を地盤とし、父親は州知事、兄は下院議員、本人も下院議員だった経歴を持ち、フィリピンに無数にある政治屋一家出身。
また、ピメンテルもミンダナオ島カガヤン・デ・オロ市を地盤とする反マルコスの闘将と知られる、前上院議員の父親の遺産を引き継ぐ形で立候補した背景があり、与野党を問わず政治の世襲化の極みがここにも表れている。
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