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中部ヴィサヤ地方を襲い同地に甚大な被害を与えた台風『ヨランダ』から2カ月経つ現在、被災地では歩みは遅いものの復興事業が展開されている。こうした中、被災者用共同住宅建設の『建設費水増し』疑惑が浮上した。
このような不正はフィリピンの伝統文化という識者もいて、実際各国からの救援物資の横流しや今年あった選挙の反対陣営に物資を回さないなど枚挙にいとまない。
そのため元警察庁長官、前上院議員の強面を復興事業のトップに据えて睨みを利かせているが、効果は上がっていない。
今回の疑惑は①建設コストは1棟当たり20万ペソ程度なのに、事業官庁である公共事業道路省の見積もりは96万ペソの水増しだった。
②事業を請け負った業者の使用建材の規格がマチマチで粗雑。材料費を浮かしているのではないか。
③業者の選定も与党系の政治屋の口利きで首都圏の業者に偏り、利益誘導の汚職臭い。などが大手英字紙で指摘されている。
これに対して公共事業道路省長官はこういった事実があるなら『辞任する』と表明している。
何か問題があると、責任者が辞任を申し出るのは、これもフィリピンの『カッコ付け』の伝統で内実は『大統領が受理しない』と読んでのパフォーマンス。
最近でも『クリスマスまでに電力を復旧できなければ辞任する』と大見得を切ったエネルギー長官と同じ線にある(達成できなかったが、大統領は慰留、続投となった)。
この仮設共同住宅だが、3月頃までに222棟を建設予定し、1棟当たり24世帯が入る予定だった。しかし、1世帯当たりの面積が8.6平米しかなく、国内外からあまりの狭さを指摘されて約2倍の17.3平米となった。
このため入居世帯数が半減し、約50万世帯が住居を失っている状態で入居できるのはわずか2600世帯しかなく、進まない復興事業のお粗末さに被災者はもとより支援を続ける各国の機関、NGOからも失望の声が挙がっている。
また、仮設住宅の仕様も壁は薄い合板を張り付けただけ、窓はガラスではなく合板の板、トイレや炊事場も設置されていない棟もあり、健康的な生活を送るにはほど遠く、次に台風が来たら吹き飛ぶような代物。
貧困層が3分の1を占める中部ヴィサヤ地区にしてもあまりにも酷い仮設住宅と評されている。
【写真は福島県いわき市にある日本の原発被害者難民仮設住宅。フィリピンと比べて仕様は何十倍も勝り、被災者にも貧困、格差の影を落としている】

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