今年の12月末にミンダナオ島全域に布いている戒厳令の期限は迫るが、ドゥテルテは必要性は失せているのに戒厳令の再延長を目論んでいる中、軍や警察の高級幹部を政府要職に送り込み、その手法に批判が集まっている。
 特に、汚職が酷いとされる関税局局長に国軍高官の人物が任命され、この人事は『現職の国軍兵士、職員はいかなる場合にも政府機関の職に就いてはならない』とする憲法5条に触れると指摘されている。
この人事に先立ってドゥテルテは関税局長に国家警察高級幹部を任命していたが、大量の覚せい剤密輸が関税局職員が発覚し、この関税局長は更迭されていた。
しかし、この人物はすぐに別の閣僚級高官に取り立てられていて、更迭というのは後任に席を空けるためであったといわれている。
関税局の後任に今度は国軍から選んだわけだが、ドゥテルテは国軍の持つ軍事力に頼れば政府機関の統制が取れると過信しているが、それは間違いとの指摘も強い。
フィリピンの三大汚職組織は『国税局』、『入国管理局』、そして『関税局』といわれていて、それに『国軍』、『警察』も加えられ、これら問題組織間同士で統制を計るとは、フィリピンの実情を知らな過ぎるのではとの声も高い。
ドゥテルテが国軍や警察の幹部を重用する理由として、定年が早い幹部を政府要職に採用して忠誠を誓わせ、同組織を掌握し、ドゥテルテに不満を抱く軍内部にあるクーデター派を懐柔する狙いがあるとされる。
また、マルコスを見習った軍事独裁政権への布石だとの見方もあり、健康不安も囁かれるドゥテルテの真意は測れない状態となっている。
現在、ドゥテル政権閣僚級で国軍出身者は社会福祉省、国防省、環境天然資源省、内務自治長官と今度の関税局長で5人となるが、軍事しか知らない者が畑違いの分野に就任していることに、その手腕と知識に疑いの目が向けられている。
フィリピン国内経済は足踏み状態に入り、急激な物価上昇を招いているドゥテルテの政権運営に不安感も出ていて、一時は高率の支持率を保っていたものの、ドゥテルテの支持率は下がっている。
そのため、国民の関心を他に向けさせるために外交で点数を稼ぐ行動に出るのではないかとの観測もあるが、いずれにしても任期が3分の1を超えて初期の高揚感は国民からもドゥテルテからも失せている。
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