2022年5月で6年間の任期を終えるドゥテルテ大統領だが、憲法で大統領の再選は禁じられているために、憲法の隙間を突いて2022年副大統領選に立候補することを表明し権力への執着ぶりを見せている。

退任まで7ヶ月余を切った現在、反ドゥテルテ陣営から在任中の疑惑を指摘され、それに対してドゥテルは個人や機関に脅しをかけ争点をずらしていると批判が高まっている。
発端は会計検査院(COA)が8月に、コロナ対策予算として保健省に計上されている673億ペソ(約1400億円)の会計処理が不適切と報告されてからで、COAの指摘に対してドゥテルテは無視を決め込み、政府の独立機関に対する対応にも批判は集まった。
この問題は公的機関の不正問題を討議する上院ブルーリボン委員会でも取り上げられ、委員長であるゴードン上院議員から厳しく問い質された。
ゴードンはフィリピン赤十字総裁の職にあり、赤十字組織を選挙運動に利用しているという評判のある人物だが、ドゥテルテは赤十字はゴードンが総裁になってから年次会計報告を出していないと攻撃。
また、赤十字をCOAに対して会計検査をしろと指示を出したが、COA側は政府機関ではないと拒否。
そこでドゥテルテ側は赤十字は1回4000ペソのコロナPCR検査を400万回も行っている事実から、相当な利益を上げているのに公開されていないと反撃。
それに対してゴードンは資本金62万5千ペソしかない小さな製薬会社に政府は医療物品調達に87億ペソという巨額、しかも不当な価格であったと指摘。
この不明朗な調達はドゥテルテの地盤のダヴァオ市の中国系実業家が仲立ちしたと見られ、同人は大統領経済顧問を務めた人物でダヴァオの経済人に対する身贔屓がここにも表出した。
ドゥテルテはそれまでフィリピンには携帯電話会社が2社しかなく独占状態になっているとして第3の携帯電話会社参入を決め、公開入札という形を取ったが応札はなく、決まったのはダヴァオ発祥の財界人の会社で、これは日本の自民党安倍ではないが忖度した結果の出来レースと批判された。
ドゥテルテがダヴァオの財界人に便宜を図るのは、2016年大統領選に立候補した時にこれら中国系財界人から資金を受けているためといわれ、露骨な便宜供与と指摘されているが、フィリピンの政治スタイルは昔からこの様に進んでいて、国民の間にも恩を恩で返すのは当たり前で大きな問題にならない。
この他野党自由党のドリロン上院議員からの疑惑指摘では、過去の汚職事件の首謀受刑者や違法薬物関与首長や警察高官と一緒に撮った写真を持ち出して攻撃。
政権末期にはこの手のスキャンダルが出るものだが、一連のドゥテルテのヒステリックな反撃は当人の資質とはいえ、大統領の品位を落とすと批判され、また次期副大統領選に出馬するのは在任中の汚職疑惑暴露を怖れるためという指摘も根強い。
【写真はダヴァオ市長時代のドゥテルテ】
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