2016年に誕生したドゥテルテ政権は2022年6月に6年間の任期の終りを迎えるが、任期中の実績について様々な角度から評価が出ている。

中でもドゥテルテ政権の目玉は巨大インフラ建設事業を各国や企業と組んで進めた『BBB』政策で、そのBBB政策に乗ったのが日本で、5年間で官民合計1兆3800億円がフィリピンに投じられた。
2017年7月にフィリピンを公式訪問した安倍前首相が、ODA(政府開発援助=税金)と民間の投資を併せてドゥテルテ政権の5年間で1兆円を投じると表明し、『比日経済協力インフラ合同委員会』を設置し、同委員会会合は発足以来これまでに12回開催されている。
2月16日、同委員会会合がオンライン形式で開催され、目標額の1兆円を超えたことに両国関係者は満足を明らかにしている。
支援内容で顕著なのはJICA(国際協力機構)、ADB(アジア開発銀行)といった日本政府の代理機関などを通じた巨額なODA案件(借款)で、特に鉄道、道路など、しかもドゥテルテの地盤であるダヴァオに偏っている点である。
日本のODAは中国などと違って利率は10分の1以下、返済期間も長く、有利な条件がそろっていて、借金返済は今後の政権が苦しめば良いと、そこに目を付けたのがドゥテルテ政権のBBB政策になる。
ドゥテルテ政権で日本が締結、進行中の目ぼしいODA案件を見ると、2018年に首都圏軽量鉄道整備で607億円、フィリピン初の地下鉄プロジェクトに1045億円、地下鉄プロジェクトは一期工事で、全線開通するには5000億円近くかかるといわれている。
2019年には南北鉄道延伸事業に1672億円でこちらも追加が見込まれ、これらの鉄道プロジェクトは日本の企業と機材を使うようになっていて、日本の縮小する鉄道建設事業者救済する目的ではないかとの指摘もある。
2020年にはセブ-マクタン島に第4の橋【完成予想図を掲載するがマクタン島既存の道路への接続に問題がある】を架け沿岸道路整備に1192億円、ダヴァオ市ではトンネル工事を含むパイパス道路プロジェクトに348億円が投じられ、この他数百億円単位のプロジェクトはいくつもある。
ドゥテルテ自身は任期中の成果として、鉄道や道路の開通を望んでいたがコロナ禍もあって望み薄となっている。
こうした真に必要とは思えない巨大インフラプロジェクトに日本の税金を注ぎ込むより、フィリピン国民の福祉の向上に繋がるプロジェクトに軸足を移すべきという声は多いが、ODAが利権と化している現在難しいのが現実である。
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