次期大統領マルコス政権の閣僚人事はほぼ決まったが、フィリピンもアメリカと同様に当選に協力した選挙功労者に重要ポストを与える方式を見倣っていて、このほど発表された『観光省』大臣にセブの町長が任命されて話題になっている。
任命されたのはセブ市から渋滞著しい幹線道を北部に向かう途中にある『リロアン町』【写真は同庁舎 現在新庁舎を建築中】の弁護士でもある町長で、フィリピンの自治体は町といっても日本と違って人口規模は大きく、同町の人口は16万人を数える。
同町長は今回のセブ州知事選に再選を目指し当選した女性知事の娘で、同町長も再選を目指して難なく当選。
また同町長の夫はリロアン町を含む今回の下院選で再選に成功し、夫が下院選に出馬する前は夫が町長、妻が副町長を務めリロアンの政治王朝化は進んでいる。
セブ州は今は弱小政党に転落しているが、かつてはフィリピンを二分する大政党の自由党の発祥地で、2016年副大統領選では自由党のロブレドがセブを含むヴィサヤ地区で勝利し当選の原動力となった地域でもある。
ところが2022年大統領選では州知事に当選した知事以下がマルコス-ドゥテルテ組支持に回り、その結果セブ州でマルコスは151万票を集め対するロブレドは57万票しか集められず惨敗となった。
そのマルコスの大量得票の原動力となったのがリロアン町長で、同町長は副大統領選で当選したサラ・ドゥテルテ(マルコス内閣で教育相大臣に就任)のスポークスマンを務め早い時期からセブ州で事前運動をしていた。
マルコス-ドゥテルテ組の完勝によりドゥテルテの引きから今回観光大臣を射止めたが、自治体首長は閣僚を兼職出来ないために、2期目就任の宣誓もしない内に辞任となり、同町長へ票を入れた選挙民の中には町長の権力欲に白ける人もあるが、大多数の町民は今回の抜擢人事に湧いている。
町長職が空席になると副町長が自動的に町長へ昇格するが、今回当選した副町長は一族の身内で、リロアン町政治王朝には何の影響もない。
この観光大臣ポストだが、アロヨ政権時代にセブ選出の下院議員が任命されていたことがあり、この人物は今回のセブ州知事選に立候補して得票率20%も取れず、リロアン町長の母親に惨敗したから妙な因縁がある。
セブは世界的なリゾート観光地で、セブから観光大臣が生まれたことに業界では歓迎しているが、現在の観光大臣も著名な政治家の娘である人物が就任していて、大臣とはいうものの政権のお飾り、マスコット的存在だから能力は要らないと辛辣な意見を吐く業界人もある。
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