今年の5月13日にフィリピンは正副大統領を除く全国選挙が行われるが、選挙運動は解禁されていないのに資金力に物を言わせた違法な事前運動は激しさを増し、それに対して無策なのは選挙管理委員会だが、むしろ今年のGDPを押し上げると歓迎する向きもある。

選挙の中で注目されるのは上院議員選で、フィリピンの上院議員は6年任期で定員は24人、この半数12人が3年ごとに改選され、全国区方式で投票されるために中味はなくても知名度の高い候補者が当選している。
この上院議員候補予定者に対しては毎月のように民間調査機関によって候補者への支持率調査が行われ2月3日に最新の結果が公表された。
この調査で明らかになったのは、ドゥテルテ大統領が政権に抱え込んで推す候補者の急伸振りで、公職の地位で選挙運動を展開していると批判が高まっている。
中でも12月の調査で支持率23%で15位であったボン・ゴーが41%と急上昇し、5位に浮上。
同氏はドゥテルテ政権の大統領特別補佐官を務めていて、マスコミへの露出度は高く、立候補を決めた時点で公職を退くべきとの指摘はあっても声は高まらない。
また、ドゥテルテの腰巾着と揶揄されるデラ・ロッサが当選ライン上の13位に入った。同氏はダヴァオ警察署長からドゥテルテが大統領当選後に国家警察長官に引き立てられ違法薬物関与容疑者抹殺計画を推進した人物で、長官退任後に司法省矯正局長に横滑りし議席を狙っている。
苦戦を伝えられていた両氏が当選圏内に入ったことで調査そのものがドゥテルテの『やらせ』ではないかとの疑義も生じているが、調査機関は一定程度信頼できる『SWS』で、真相は不明。
なお、本調査では前回より候補者の変動が大きく表れ、再選を狙うグレース・ポ―が64%を得て首位に躍り出た。
同議員は2016年大統領選に出馬し、ドゥテルテが参戦するまでは当選する勢いがあったが、ドゥテルテ出馬後に失速し惨敗する。
2位は前回首位であった再選を狙うシンシア・ヴィリヤールの57%。同議員は不動産王と称される元上院議員を夫に持ち、その夫も前回大統領選に出馬するがドゥテルテに食われて惨敗。
3位に俳優出身のリト・ラピド元上院議員が入り44%を得た。同氏は前回調査では6位、38%を得ていて、返り咲きに一歩近づいている。
4位はピア・カエタノが43%を得、前回の40%から下がり順位も落とした。
同氏は2期連続して上院議員に当選していて、規定によって1期3年を休んで再び上院議員を目指すが、現在はマニラ首都圏タギック市に一族で政治王朝を築き同市選出の下院議員。
なお、1位、2位、4位は女性で、フィリピンでは女性議員は男性議員と比べて汚職をしないという神話があって、女性の政界進出は日本と比べて遥かに高い。
5位に先述のゴーと並んで再選を狙うソニー・アンガラが入り、同議員の前回調査は40%、4位に入っていて父親は著名な弁護士で元上院議員。
8位にはマー・ロハス【写真】とボン・レヴィリアが同率38%を得て並んだ。
ロハスは元大統領の孫と大財閥の御曹司、過去の上院議員選でトップ当選と華々しい経歴を持ち、2012年副大統領選、2016年大統領選に出馬するも落選。
毛並みの良さが反感を買っていると言われるが、前回調査では10位、28%のため上げ潮になっている。
レヴィリアは政治一族出の人気俳優で知事の後、上院議員に当選、再選を狙うが在任中に汚職で逮捕され、未だ収監中。
独裁者の娘で北イロコス州知事のアイミー・マルコスは前回調査では27%を得11位に入っていたが、今回調査ではランクを落とし14位。
同人は立候補表明時は5位前後の安全圏に入っていたが、徐々に順位を下げて当初の勢いを失っている。
このように支持率という曖昧な基準で調査が行われているが、選挙民の動向の流れについては大まかに分かり、また投票日が近づくにつれて大きく変動するので、競馬競輪の予想よりは少し当たるととらえた方が良い。
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