国の機関の会計を検査する組織として会計検査院があり、多くの国では裁判所と同様にその立場の独立性を保障されていて、最高権力者といえども口を挟むことは許されていない。

フィリピンの会計検査院はCommission on Audit(COA)と呼ばれているが、このCOAが8月11日、保健省(DOH)の2020年度予算執行を監査した暫定会計報告書を発表した。
DOHにはコロナ対策費として798億ペソ(約1680億円)の予算が付けられているが、その内673億2000万ペソ(約1400億円)が使途不明や調達記録が残っていない、未執行など不明朗な状況が明らかになった。
COAの指摘に対してDOH大臣は2020年12月31日までに689億ペソが適切に執行されていると反論しているが、COAの報告書では2020年度予算2008億5500万ペソの内、29%に当たる591億ペソが未執行となっていて、コロナという緊急を要する案件を抱えるDOHの執行状態に各方面から不満が上がっている。
特に使途不明について50億ペソ分の調達手続き記録がない、またパソコン4台に70万ペソを支払うなど、約2億ペソ分が政府に不利な購入であったと指摘されている。
こういったCOAの会計検査に対して、ドゥテルテ大統領はCOAを罵倒する態度に出て、会計検査に限らず一連の不祥事を引き起こしているDOH大臣をかばい続けている。
また、ドゥテルテの古くからの盟友である同大臣の罷免を求める動きには断固拒否すると明言し、閣僚に対してCOAの監査報告書は全て無視しろと指示を出した。
こういったドゥテルテの態度に議会や識者からはCOAは独立した憲法上の機関であり、大統領がCOAの任務を妨害するような言動はあってはならないと痛切に批判されている。
同政権の不明朗、汚職疑惑は他にもあって、次期大統領選に立候補有望なパッキャオ上院議員は、コロナ禍での現金給付事業で104億ペソが使途不明になっていると暴露している。
ドゥテルテ本人は政権に汚職をする者はいないと強がっても、末端では火事場泥棒的な汚職は相変わらず行われていて『汚職天国』の冠はコロナ禍でも猛威を振るっている。
|