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 長年、政治汚職の元凶とされていた政府予算の『優先開発補助金』(通称ポークバレル)は最高裁によって違憲判決が出て、アキノ政権下では撤廃された。
しかしながらドゥテルテ【写真】政権初の2017年度予算にはこのポークバレルが下院議員に対して盛り込まれていて、8月22日から始まる下院予算委員会審議に少なからぬ影響を与えている。
2017年度予算総額は3兆3500億ペソ(約7兆110億円)で、前年度予算より11.6%増加した。
この予算規模だが知事が連続途中辞任という失態を起こした東京都の昨年度の予算総額が13兆3000億円で、フィリピンは東京都の半分少々の予算規模となっている。
世界的には昨年比で見ると予算規模はヴェトナムがフィリピンより上位、パキスタンが下位となっている。
問題となっているポークバレルだが、この趣旨は地方選出の議員の選挙区に対してインフラ事業や医療、奨学金と言った地元の民生用に設定されたものだが、実態は議員の選挙対策であり、使い道も不透明で中には懐に入れる議員も多く、汚職の温床とされる。
そのため、アキノ政権になって違憲判決が出て廃止されたが、ドゥテルテ政権は発足した政権運用の円滑を目指し、下院議員を懐柔するためにポークバレルを復活した。
復活した額は総額235億ペソで、下院議員一人当たり8000万ペソ(約2億円)にもなる。
これは日本でも問題になった使い勝手自由の『政務活動費』と同じで、このポークバレル目当てに政治屋が選挙区で世襲を続けているのがフィリピンの実態となっている。
なお、予算額の内訳だが、約40%が教育や保健、社会福祉関係に振り分けられ、教育省が5676億ペソと省庁の中では最大の予算額となっている。
これは今年から始まった学校教育12年制のために、教員確保、教室増設などが額を引き上げている。
また、インフラ関連では総額8607億ペソで、前年より13.6%増えた。
その他省庁では、社会福祉開発省が1299億ペソ、厚生省が940億ペソで、予算額としての省庁順位は5位と6位を占めた。
一方、南シナ海を巡って中国との暗闘が続くため国防予算は15%増の1345億ペソとなり、政権の姿勢を現わす違法薬物撲滅などの治安対策には国家警察が前年より24.6%激増の1104億ペソとなった。
なお、ポークバレルの予算盛り込みに関して、ドゥテルテ陣営の下院議長は予算執行に厳しい透明性を確保すると説明しているが、既得権を易々と手放さない議員連中にとっては骨抜き、お手盛りが行われるのが必至で、今回の予算措置に対して再び違憲訴訟が起こされる模様。
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