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1月22日よりマレイシアのクアラルンプールで開かれていた、反政府武装勢力『モロ・イスラム解放戦線=MILF』とフィリピン政府との第43回和平準備会合で、25日、懸案となっていた『付属書』事項に双方の合意がなされ一歩前進となった【写真はフィリピン政府提供=合意文書を手渡す左がフィリピン代表、右がMILF代表】。
今回の懸案事項は(1)MILFの抱える1万人にも及ぶ戦闘部隊の円滑な武装解除と解体。(2)設立予定の新自治政府の警察組織の在り方。
(3)停戦による国際監視団の受け入れ方。(4)疲弊した紛争地の復興対策などで、今回の会議で詳細の詰めが行われた。
この付属書は2012年内に締結する予定だったが1年遅れとなり、アキノ政権が目指す2016年の任期切れまでに、ミンダナオ和平問題が解決できるか微妙な影を落としている。
今回の合意、調印を受けて新自治政府を樹立するための『バンサモロ基本法案』が5月にも国会に上程、審議されるように、移行作業も本格的になるが、政府はこの法案を最優先法案として扱い、国会の構成も与党側が優勢なため可決は2014年内に成立すると見られている。
その後のスケジュールでは、法案成立を受けて、2015年5月には自治政府に加わるかどうかの、ミンダナオの関係地域ごとの住民投票が実施され、その結果を受けて基本法が発効。
2016年5月には大統領、上下院議員、自治体首長と議員選挙と同時にバンサモロ議会選挙が行われ、バンサモロ政府が発足する予定となっている。
こういった一連のスケジュールに対して、前政権アロヨの時は一旦合意に近づいたものの、自治政府樹立は『憲法違反』という判断が最高裁よりなされ頓挫。
今回のアキノ政権による和平合意もアロヨが進めてきた内容と変わらず、国会で成立はしても再び最高裁で『憲法違反』の判決が出る恐れがある。
また、今回の合意相手であるMILFは元々『モロ民族解放戦線=MNLF』から方針を巡って分派したグループで、和平交渉が進み、蚊帳の外とされたMNLF側には焦燥感と嫉妬もあり、昨年9月には、元議長が率いる手勢がサンボアンガ市街地を占拠し、政府軍と交戦、双方で250人前後の死者、避難民10万人を超す事件もあり、こういったグル―プの暴発を防ぐ手立てはない。
さらに、ミンダナオ島はフィリピン共産党の武装組織『新人民軍=NPA』が、イスラム系武闘組織が生まれる前から強固に活動している地域でもあり、こちらの交渉も進展中だが思わしくない状況下にあり、各地域で政府軍と武力衝突が勃発している。
同様に今回の和平主役MILFからも既に和平方針に不満を持ったグループがMILFを離脱して、新しい武闘グループを結成、ミンダナオ島各地で政府軍と交戦を繰り返し、紛争の火種は消える様子がない。
ミンダナオ紛争はキリスト教とイスラム教との宗教戦争との見方もあるが、ただでさえ貧困国に数えられるフィリピンでも紛争地は国内で最も貧しい地域に当たり、紛争と貧困の連鎖が絶ち切れるかどうか、アキノ政権の真価が問われている。
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