内戦の続くミンダナオ島イスラム地域の平和への一歩とされる、イスラム自治政府を創設するために『バンサモロ基本法(BOL)』が制定され、その承認と帰属領域を巡って1月20日に該当地域で住民投票が行われた。

その結果はBOL承認が多数派を占めたが、反対派が多数を占める地域があり、必ずしも一枚岩でないことが判明した。
その中で、島嶼部のスールー州では反対が52%と賛成を上回り、バシラン州州都のイサベラ市でも反対が上回った。
島嶼部で反対票が多かったのは、今回のBOL合意に主体であったモロ・イスラム解放戦線(MILF)に反発するイスラム武装組織モロ民族解放戦線(MNLF)の地盤のためと見られている。
今回の住民投票は投票が行われた州全域の票数で判断されるため、地域的な反対があっても反映されず承認が決まった。
ところが1月27日午前8時15分頃、スールー州州都ホロ市にあるカトリックの大聖堂で何者かによる爆破事件が発生し、これまでに死者20人、100数十人が重軽傷を負った。
また、3日後の1月30日深夜0時20分頃、スールー州北東のミンダナオ本島サンボアンガ市内にあるモスク内に手榴弾が投げ込まれ、イスラム教関係者2人死亡、4人が負傷した。
ホロ市の事件は朝のミサが行われる直前に教会内で爆発し、その爆発後に救助に駆け付けた国軍兵士を狙って、屋外に停めていたオートバイに仕掛けられていた爆弾が炸裂し被害が拡大した。
この爆弾事件ではイスラム武闘組織『イスラム国(‘IS)』が犯行声明を出しているが、捜査当局は同島に基盤を持つ過去に誘拐、爆破事件を起こした犯罪集団『アブサヤフ』の犯行と見ている。
1月29日になって、監視カメラの特定によって容疑者が絞られ捜索され、容疑者1人が殺害、2人が逮捕されたが事件の解明は進んでいない。
カトリック大聖堂が犯行対象になったのは住民投票で、現地では反対が多かったのに自動的に承認されたことの反発からと見られ、サンボアンガ市でのモスクの爆破事件は、ホロ大聖堂事件のカトリック側の報復と言われていて、イスラム教徒とカトリック教徒間の反発が根強いことを物語っている。
『バンサモロ基本法(BOL)』によって新たなイスラム教徒自治区設立の先行きは楽観を許さない状況となっている。
【写真は爆破事件のあったホロ大聖堂】
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