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フィリピンの最高裁判所判事の定員は15人で、定年は70歳。その任命は時の大統領が行う。
長官はアキノ前大統領が任命したソレノ【写真】であったが、5月11日、最高裁判事14人(ソレノは棄権)による投票によって同長官の解職が決まった。
この解職は同長官の任命資格を巡って司法省法務局長が申し立てを評議したものだが、ドゥテルテ大統領に使嗾された司法当局の自殺行為と批判が強い。
同長官はドゥテルテが一枚看板にする『違法薬物関与容疑者抹殺』政策や、ミンダナオ島に布告している『戒厳令』に批判を強めていた。
同長官は最高裁史上初めての女性の長官、しかも最年少で就任し、年齢は57歳。
ドゥテルテの任期の終わる2022年でも61歳と、その身分は盤石であった。
そのため、最高裁内に渦巻く判事同士の妬みを利用して同長官の追い落としを計り、身内の票決で長官職を追放する手に出た。
評決は解職賛成8票、解職反対6票と際どい票差となり、事前の票決予想は11対3の大差で決まると見られていたが、この評決が憲法違反になると危惧した判事が増えたためと見られている。
本来最高裁長官職の解職は大統領職と同様、議会に設けた弾劾裁判で決するもので、無理があると見られていた。
今回の賛成票決に加わった判事の任命大統領は4人がドゥテルテ、3人がアロヨ、1人がアキノとなっていて、反対判事はアロヨ3人、アキノ3人という色分けになっている。
この中でドゥテルテの任期中に定年を迎える判事は賛成派7人、反対派4人の計11人となっていて、賛成をしたドゥテルテ任命の判事1人が61歳、反対をしたアキノ任命の判事1人が58歳という構成になっている。
これに解職されたソレノ長官57歳となるが、同長官を追い落とせば最高裁の判事は1人を除いて手の内になると画策し今回の暴挙に出たと見られている。
これは次々と判事の定年がドゥテルテの任期中にあり、ドゥテルテの意を汲む人物が最高裁に任命され、最終的にはドゥテルテ任命判事14人対アキノ任命1人の陣容になり、これまで政府に対して強い判決と意見を述べてきた最高裁がドゥテルテの傀儡になることは必至。
今回の決定を受けて政府は歓迎の意を示すが、法律による歯止めが失われたとマルコス独裁政権以来の危機と指摘されている。
なお、今回解職された長官の前任者は、不正蓄財などによって弾劾が成立して座を去ったが、2代続けて司法の最高権威者が葬られるフィリピンは問題があるのではとの声も高い。
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