当初は泡沫候補扱いながら、フィリピンに蔓延する『違法薬物撲滅』一本を選挙公約にして2016年大統領選に当選したドゥテルテ現大統領だが、具体的に実行できたのは警官などによる容疑者射殺だけで、その数1万人に近いのではいわれ、その違法性に国内及び国際社会から強い批判を浴びせられている。
 そのドゥテルテの射殺実行が容赦ないと分かった違法薬物使用者は殺害を恐れ、次々と警察に自首し、その数80万人に上がっている。
違法薬物使用者は常習者が多く、その更生、社会復帰には時間と多大な手間と予算が伴うが、そういった対策は後手後手に回っていた。
中でも、ルソン島中部ヌエバエシハ州のマグサイサイ陸軍基地に作った『違法薬物更生施設』について、10月1日、大統領府危険薬物委員会(DDB)の委員長が『失敗だった』と明言した。
同更生施設は1万人の収容が可能で、10万平方メートルの敷地内に中国から輸入したプレハブ2階建ての建物を中心に172棟が並んでいる。【写真 Philippine Starより】。
同施設は昨年11月に大統領などを迎えて華々しく開所したが、入所者数は常時100人から400人程度しか収容できず、計画と実施の杜撰さが指摘されていた。
同施設は中国人実業家が14億ペソ(約32億円)の寄付を基に作られているが、建設機材や運営など美味い汁を吸っているのは薬物輸出大国の中国ではないかとの批判もあり、巨額の寄付をした中国人実業家に対しても『売名行為』との非難もあった。
DDBは首都圏からバスで5~6時間もかかり、交通費もかかる遠隔地に巨大施設を作ったのは、収容者への支援で重要な家族の協力が難しく、フィリピンの文化に合わないと同巨大施設を見限り、この手の更生施設は地元に密着した小型の施設に転換すると見直しを求めている。
後先を考えずに計画だけが独り歩きするフィリピンの悪弊が端的に表れた同施設だが、これに対して大統領は目玉内政の失敗は外交でと、先月末には日本を訪れ日本から援助を引き出したと政府は誇示するが、国内では内容が消化試合であったために話題にはならなかった。
当選時は高支持率を維持していた同大統領、7月~8月にかけて行われた調査では支持率が11%も下落する67%に留まり、下落傾向は続いている。
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