国内に蔓延する違法薬物撲滅を公約にしてダヴァオ市長から2016年大統領選で当選したドゥテルテに対して国際刑事裁判所(International Criminal Court=ICC)検察局が予備捜査を開始した。

ICCはオランダのハーグに本部【写真】があり、個人の国際犯罪を裁く組織で2003年に設立され現在123ヶ国が加盟し、フィリピンはアキノ前政権時代の2011年に締結、加盟。
なお、国連の機関として国際司法裁判所(International Court of Justice=ICJ)があり、こちらは国家間の係争を取扱い本部はICCと同じハーグ。
また、南シナ海を巡ってフィリピンが中国の覇権進出を提訴したフィリピンとの争いでは常設仲介裁判所(Permanent Court of Arbitration=PCA)が扱いフィリピンの勝訴となったが、法的拘束力はあるものの執行権はなく、当該国が判決を無視すればそれまでで、実際、中国は判決に対して居直っている。
2017年4月、フィリピン国内人権団体は違法薬物容疑者への警察による超法規殺人を『人道に対する罪』と『大量虐殺』に相当するとして、ドゥテルテをICCに提訴した。
このフィリピンの超法規殺人は欧米各国や国際人権団体から強い批判が寄せられていて、ICCが捜査を開始する追い風になった。
超法規殺人関しては告発ではドゥテルテがダヴァオ市長時代に1400人以上、大統領になってから8000人以上が殺害されているとされているが、国際人権NGOによるとドゥテルテが大統領に就任以来、殺害者は12000人以上と見ている。
これに対してフィリピン警察当局は警察による違法薬物容疑者の殺害は4000人前後と発表しているが、この膨大な殺人数から大統領以下のフィリピン人は『人殺し』の倫理的感覚が足りないのではとの批判も起きている。
ICCの検察局は予備捜査開始をフィリピン政府に通告し、2月8日、政府当局は公式にそれを認めている。
検察局の予備捜査が進み、起訴相当と判断されるとICCは逮捕状を発行し、身柄を拘束できるが、実際に一国の元首を逮捕できるかは過去の例からほとんど不可能。
ICCはアフリカの多くの独裁者を起訴し、逮捕状を発行しているが何れも逮捕に至らず、これら独裁者は大手を振って各国との外交を首脳として継続中で、手が出せない状態が続いている。
また、起訴案件がアフリカ諸国に集中していると、自国の現状を棚に上げたアフリカを中心にICCをボイコットする動きもある。
このため、今回のドゥテルテへの捜査がどこまで進捗するかは未知数となっているが、フィリピン政府はICCの捜査は『この件ではウンザリしているが、反論の機会でもあり調査には協力、歓迎』と述べている。

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