 マニラから北東300キロにイサベラ州があり、州都カウアヤンから東方向40キロにサン・マリアノ町がある。
この町でバイオ事業が日本の『伊藤忠』と『日揮』によって進められている。
イサベラ州は昨年5月の選挙で2期続いた人権派の女性知事が、地元の政治支配集団に敗れ、旧態の政治屋一族が知事に復活した州で違法伐採で知られた地域でもあった。
この利権派知事の復活と軌を同一にして『バイオ・エタノール事業』が動いているが、これに対して現地の農民などによって反対運動が起こっている。
この事業は現地の遊休地11,000ヘクタールにサトウキビを植え付け、年産54,000トンのエタノールを精製、自動車用燃料と発電量19メガワットの発電所を建設する計画で、2012年から製造、販売の予定となっている。
ところが遊休地とはいうものの既にトウモロコシや米を作っている農地を1ヘクタール当たり年5,000ペソ(9,000円)で借り上げる体の良い工作が地元有力者によって進められている。
このため目先に釣られて転作する農民も多く、従来の食糧生産に影響を与えつつある。(写真は現地のトウモロコシ畑からサトウキビ畑に転作された畑)
事業者側は地元の雇用が増えるなど甘言を弄しているが、実際は安価で不安定なサトウキビ労働者になるだけで使い捨てとの見方が強い。
エネルギー問題でバイオ事業というと歓迎される向きはあるが、実態は商社などが儲け口を探した末の事業であり、エネルギーに対する理想は付け足しであって現地農民、先住民を踏みにじっての事業が多く注意が必要である。
特に大手商社の伊藤忠は1970年代以前にフィリピンの山の樹を切り出し丸裸にした張本人でもあり、相変わらずフィリピンを食い物にする姿勢は変わらず、この点でもフィリピンの環境団体などから批判の手が強い。
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