国際的な平和事業に協力する組織として存在するJICA(国際協力機構)が、軍事部門に踏み込んだと批判されたフィリピン沿岸警備隊向けの巡視船2隻目が5月27日建造地の山口県下関市をフィリピンに向けて出航した。

JICAは沿岸警備隊は軍ではなく警察であるという理由で、『海上安全対応能力事業』と名付け、2013年に187.37億円、2016年に164.55億円、計351.92億円で有償資金借款契約をした。
1隻目は2021年7月に三菱造船下関製作所で進水し、2022年5月に就役した【写真の9701番 Teresa Magbauna】。
今回日本を出航した2隻目も同型クラスで、全長96.6m、排水量2260トンで、これは旧日本海軍の駆逐艦クラスに該当する大きさになる。
同巡視船は最高速度24ノットで巡航距離4000海里、士官17人、兵員67人の計67人で運航する。
同船はエアバス製のヘリコプターを搭載し、遠隔操作の無人潜水機、高速作業艇などを持ち、レーダーなどの探査装置も最新式器機を備えている。
同巡視船は【9702番 Melchora Aquino】と命名されるが、1番艇2番艇の名前は共にスペインやアメリカからのフィリピン独立運動を闘った女性に因んでいる。
同船はフィリピン到着後に各種習熟訓練を経て9月に就役する予定で、これら2隻の配備は南シナ海を我が物に支配する中国に対して睨みを利かせることになるが、中国側は1万トン級の巡視船を投入していて日本の海上保安庁の巡視船もタジタジナな状況なので、どれほど効果があるか未定。
フィリピン沿岸警備隊の艦艇は今回の日本供与の2隻が最大艇で、この他の大型巡視船もアメリカ、フランス、オーストラリアの援助を受けて建造、運航していて他国頼り、借金で賄っているとの批判も一部にはある。
今回の2隻の供与でこの事業が終了するかどうかは未定で、事業が承認されたのは安倍政権の時で、安倍の選挙地盤である山口県の造船産業を救済するためにも、フェーズⅢという形で行われるとの観測も出ている。
|