歴代総裁は日本の指定席で、マニラ首都圏に本部のあるADB(アジア開発銀行)が、総延長163キロに及ぶ『南北通勤鉄道』【図】に43億ドル(現在相場で約5800億円)の融資契約をフィリピン政府と結んだ。

同路線はマニラを中心に北はパンパンガ州クラーク、南はラグナ州カランバ間を繋ぐ事業で、ADBの他にJICA(国際協力機構)も同路線には有償資金供与を行っていて、日本側のフィリピンにおける鉄道事業への傾倒が目立つ。
JICAの場合、同路線に2015年に2420億円、2019年に1672億円の契約が締結され既に一期分は着工されているが、最終的には同鉄道事業は兆円の桁に達する事業になるのではと見られている。
フィリピンの国別対外債務(国及び民間)に関してフィリピン中央銀行は3月末で、日本から145億3千万ドル借りていて、国別ではトップの債権国となっている。
これに今回のADBによる43億ドルの巨額融資を加えると188億ドルとなり、これはフィリピンの年間国家予算が80億ドル程度なので、国家予算の2倍以上を日本から借金をしている勘定になる。
日本が債権国でトップに立っているのは低い利率と支払いの優遇で、事業によって多少の違いはあるが、利率は0.1%、償還期間は10年以上据え置きの40年払いが多い。
途上国に巨額な資金を貸し付けて事業を進めさせ、債務不履行にして事業を取り上げたり外交上で優位に立つ『債務の罠』を仕掛けている中国などは利率は日本の10倍以上、償還期間も短い。
そのためもあってかフィリピンの中国に対する債務額は26億ドルで国別では6位と低く、中国贔屓であったドゥテルテも借金に関しては慎重であったことが分かる。
巨額の資金が注ぎ込まれる『南北通勤鉄道』は『タイド案件』で、これは日本の企業、資機材を使うようにあらかじめ決められている内容で、既に日本の大手ゼネコン、商社を中心に工事は始まっている。
同路線は部分開業しながら全線開通を目指すが、新たに発足するマルコス政権の終わる2028年までの完工を目指している。
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