現在のマニラ国際空港は1時間当たり40機の離発着能力を持つが、既に過密化しているために新たな国際空港の建設が計画されている。
これにはいくつかの案があって、具体的に有力なのは、現在のLCC向けのクラーク飛行場を整備する案とマニラ湾を埋め立てる案が候補に挙がっている。
その中でマニラ湾を埋め立てる案はマニラ首都圏に至近の位置にあるアクセスの良さで、JICA(国際協力機構)の調査でも有望と明らかにされている。
一方のクラーク飛行場案は日本でいえば成田空港と東京都心以上の不便さと距離があり難点が多いとされている。
この新空港建設計画に対して、フィリピンの巨大資本が興味を示していて、国内最大手小売業を核にし、国内最大商業銀行などを擁するシューマートや、ビール会社から複合企業に姿を変えたサンミゲル社などが合弁に名乗りを挙げている。
サンミゲル社の計画によると、埋め立ては首都圏パラニャケ市からカビテ州バコ-ル町にかけての海岸沿いで、約1600ヘクタールを埋め立て4本の滑走路を建設する。
サンミゲル社は既にこの地域に157ヘクタールの埋め立て地を所持しているが、これによって1時間当たり250機の離発着能力を持ち、年間約1億5千万人の乗客を扱えるとされている。
建設費は空港への道路建設などを含めて100億ドルを見込み、この規模の空港は2つの滑走路しか持たない香港やシンガポールが持つ国際空港を上回るが、肝心の集客能力などはまだ絵に描いた餅状態となっている。
こういった計画が持ち上がるのはフィリピンで寡占化が進む企業集団が新たな儲け口を開拓する行為に他ならず、計画には港湾業者最大手会社やフィリピン航空を傘下にする中国系財閥なども資本参加に興味を示していて、これらの企業集団の経営者はフォルベスの世界長者番付の上位に顔を出す常連ばかりである。
こういった経済だけにしか頭のない連中に対して、今でも過大なマニラ湾埋め立てで環境が破壊されていると告発し、空港建設反対を叫ぶグループも存在するが、その声は大きくなっていない。
【写真は現在のマニラ国際空港】
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