フィリピンを舞台に経済活動をする外資企業の多くは、横のつながりを求めてその出身国を母体とする経済団体に加入している例が多い。
特に商工会議所系の活動は盛んで、フィリピンには欧州、アメリカ、カナダ、日本など目ぼしい国はフィリピンに商工会議所組織を持っていて、これらの組織はフィリピンの経済政策や政治問題に口を出すことも多々ある。
今月の15日にかねてから問題になっているマニラ港発のコンテナ貨物滞留に対して、これら日本を含めた各国の在比商工会議所と運送業などの国内業界団体が、フィリピン政府にこの問題に対して早急な解決を計るように要望と提案をした。
要望によると①コンテナを運ぶトラックを従来の規制から外すこと。
②同トラックが持つマニラ港入場許可証の大幅な期間延長。
③マニラ港へ入る道路にトラック専用道路を設けること。
④現在実施されている滞留貨物の保管料撤廃。
⑤マニラ港に代わる首都圏外にあるバタンガス港、スービック港の港湾施設の早期改善。
などで一見もっともらしい提言だが、自分たちに虫の良い要求ばかりでこれら在比商工会議所の常識度が疑われている。
元々、マニラのトラック規制は著しい交通渋滞と劣悪な排気ガスを出すこれら大型トラックが『元凶』の一つとしてやり玉に挙げられたもので、環境問題に敏感な欧米系の経済人が何ら具体的な解決策を示さずに、自社の経済、生産活動に影響があるとしてフィリピン政府に問題を突きつけるのは筋違いではないかとの指摘がある。
こういった外資系からの申し入れ、あるいは抗議に対してフィリピン政府は弱く、弁解を述べるだけだが、識者によるとこれは『経済の名を借りた新植民地主義』と、フィリピンで経済活動を展開する外資企業を糾弾している。
またこれら外資企業は万年失業国のフィリピンに雇用を創出するなど、フィリピンのために寄与しているというが、その根本は経済搾取に過ぎないと強く批判する経済学者もいる。
今回、在比商工会議所などが不毛な要望を出したのは、クリスマスシーズンを迎える今後の2ヶ月間がコンテナ出入荷の勝負時と見ているからで、なりふり構わずといった感が強い。
【写真はマニラ首都圏に劣らず、渋滞の激しくなる一方の交通政策無策のセブ市の様子】
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