戦前のセブ島には鉄道が、東海岸のダナオからセブ市を通ってアルガオまで敷かれていたように、フィリピンは鉄道網の発達した国の一つであった。
しかし、戦後、自動車に押されて衰退し、維持ができなくなって次々と路線は廃止。
現在はマニラとルソン島南部へ行く長距離路線と首都圏のわずかな距離を走る通勤線だけしか運行されていない。
ところが、大量輸送に適し渋滞がなくコストも安い鉄道が最近は見直され、各国で新たな鉄道建設が進められている。
フィリピンも首都圏に敷設した軽量鉄道網によってその利便性が認知され、現在ある鉄道路線整備と新規の路線計画が運輸通信省によってこのほど明らかにされた。
それによるとルソン島中部ブラカン州マロロス市とラグナ州カランバ市を結ぶ南北通、勤線(全長93キロ)の新設。
この事業費は1173億ペソ(現在のレートで約3200億円弱)。2015年第2四半期までに入札を開始、2017年代四半期に着工、2020年第3四半期までに運行を始める。としている。
今一つは、カランバ市からルソン島南部アルバイ州レガスピ市まで既存の鉄道を大幅増強して運行。
この路線にはカランバ市からバタンガス州まで、またレガスピ市からルソン島南端にあるソルソゴン州マトノグ町までの2本の分岐線を計画し、全長653キロ、事業費は1707億ペソ(現在のレートで約4600億円)。
この路線は2015年第2四半期入札、2016年第1四半期までに着工、2020年第1四半期までに運行開始としている。
さらに同省は首都圏からルソン島を北上する全長575キロの路線を計画していて、こちらはルソン島北部カガヤン州トゥゲガラオ市まで伸びる。
こういった路線が同省の計画通りに進めば、悪化する一方の交通事情問題解消に多少の寄与は見込めるが、巨額な建設費調達、完成後の維持管理の問題とフィリピンが不得手とする問題が横たわっている。
結局はこの分野で世界的野望激しい中国や御人好しの日本の援助頼みで、交通官僚が現実を直視せずに机上で作文しただけと早くも批判、問題の指摘がなされている。
これに対してアキノ政権は、『自分の懐は痛まない』として先頃開かれた国家経済開発庁の閣僚委員会で、この南北通勤線と長距離鉄道整備をインフラ整備事業として承認をした。
【写真はマニラ首都圏で走る現在の鉄道路線風景。保守整備が弱いことを証明している】
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