5月下旬に発表されたフィリピン政府統計によると、2015年度第1四半期(1月~3月)のGDP(国内総生産)の成長率は5.2%となった。
これは前年同期比で0.5%減となり、政府が掲げている今年度の通年目標である7.0~8.0%を大きく下回る結果となった。
なお、近年の四半期ベースでも2011年の第4四半期の4.0%以来の落ち込みで、フィリピンはアセアン域内で経済成長の好調が伝えられている中で、ブレーキがかかった状態となった。
これに伴ってGNI(国民総所得)も前年同期比1.9%減になる4.7%と落ち込んだ。
減速した原因として、公共支出の落ち込みとGDP全体の60%以上を占めるサービス部門の不調が響いたためと分析され、主要経済官庁の国家経済開発庁(NEDA)高官は『公共支出の内、建設分野での支出減が数字を押し下げた原因』と見ている。
この建設に対する公共支出は前年同期の17.5%からマイナス24.5%と、急激な転落でとなった。
しかし、民間の建設部門が不動産のバブル景気もあって、前年同期のマイナス5.1%から、14.2%へと急速な回復を見せ、公共支出が不調な中、建設部門全体では5.7%の伸びとなった。
フィリピン政府の2015年度予算は2兆6060億ペソになるが、第1四半期の支出は5040億ペソに留まり、目標の5822億ペソを14%ほど下回った。
政府支出が進まなかったのは、立法、行政両府のお手盛り的な裁量予算が2013年11月から2014年7月にかけて、最高裁が違憲の判決を下したための影響ではないかと見られ、この状況に対して大統領府は『支出減の原因を調べ、特にインフラ関連の予算支出を早急に加速するため、各省に指示をした』と、説明。
なお、部門別の成長率では農林水産が前年同期比より1%伸び、1.6%となったが、度々の自然災害に見舞われているため本格的回復とはなっていない。
鉱工業部門は前年同期比からわずか0.1%伸びただけの5.5%。
第1四半期の数字を押し下げる要因となったサービス部門が前年同期比の6.8%から5.6%となり、海外送金に次ぐ稼ぎ頭のコールセンター事業などの伸びが頭打ちの傾向が出ている。
|