日本に定められた最低賃金があるように、このフィリピンにも最低賃金は定められていて、一番高い地区はマニラ首都圏で1日当たり481ペソ(約1200円)となっている。

この地域別の最低賃金はその地域の物価事情などを勘案して定めるが、マニラ首都圏が最高額なら、セブは365ペソ(約910円)、ミンダナオ島ダヴァオ317ペソ(約790円)とマニラから遠くなるに連れて低くなり、ルソン島北部のイロコス地方など253ペソ(約630円)と首都圏の約半分という有様。
賃金を決める政府機関は『地域賃金生産性委員会=RTWPB』で、このほどフィリピン最大の労働組織である『フィリピン労働組合会議=TUCP』が1日当たり154ペソの賃上げをRTWPBに申し立てた。
賃上げ比率は30%を超える大幅な申し立てだが、インフレが進行している中、最高額の481ペソの実質は統計数字から364.12ペソに落ちているとの指摘がある。
フィリピン政府は家族5人が充分な食事や教育を受けられる最低限の額を月当たり1万2517ペソ(約31300円)と定め、これを貧困ラインと称している。
これは月25日労働として法定最低賃金を掛けると12025ペソの収入になるが、税金や社会保険を払うと手取りは1万ペソを切り、週休2日制の多い職場事情から更に収入は少ない事は明らかで、夫婦2人で働かないと食えない実態が浮かび上がっている。
フィリピンの最低賃金引き上げプロセスは時間がかかるのが有名で、TUCPが正式に法定賃金改定をRTWPBに申し立てて、3週間後から公聴会が都合3回開かれて額は決定される。
しかし、実際に賃上げが実施されるのは1年先になり、また改定額も前回2015年の要求額136ペソに対してわずか15ペソしか上がらず、RTWPBは企業寄りとの批判も強い。
また、法定最低賃金に守られている勤労者はフィリピン全体の労働者の中では恵まれていて、実際は法定最低賃金以下で働いている例は全国的にはごく普通で、これがフィリピンの貧困層、最貧困層を形成し、ASEAN内では高い成長率を誇りながらその恩恵は及んでいないのが実態となっている。
【写真はセブにオープンしたショッピング・モール。法定最低賃金では買い物もできないが、フィリピンは海外からの身内の送金で消費経済が成り立っているのでこういう巨大なモールも商売になる】
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