 訪日中のフィリピン大統領の動きに合わせて、民間でも日本-フィリピン間の投資案件の話し合い、成約が活発に行われているが、ミンダナオ島で栽培されているバナナの更なる輸入増となる案件が決まりつつある。
今回の案件は目標として毎年2000万箱、金額にして2億2千万ドル(約226億円)となり、日本国内のバナナ市場の30%を占める。
輸入会社は『ファーマインド』社(資本金約31億円)で、この会社は未熟な状態で輸入される青いバナナを追熟するための加工施設を持ち、日本に輸入されるバナナの3分の1を処理しているが、現在、同社は年間200万箱余をフィリピンから輸入している。
なお、同社はミンダナオ島でバナナ栽培、輸出を手掛ける『スミフル』(旧住商フルーツ)とも資本関係がある。
この増大するバナナ輸出のために新たに3万ヘクタールのバナナ栽培用地を開拓する必要があり、ミンダナオ島地域の農業分野に大きく寄与するとフィリピン側では歓迎されている。
これはまた、国内総生産の12%が農業分野で占めている中、農業生産者の3分の2が貧困層である事から、貧困撲滅に貢献すると見られている。
今回の大統領の訪日に合わせて真っ先にバナナ案件が持ち出されたのは、ドゥテルテ大統領の政治的地盤がミンダナオ島にあるため、その基幹産業であるバナナ輸入増によって双方の利害一致の思惑が伺える。
これは訪日前に中国を訪問し、南シナ海の領有問題を巡って国際的に四面楚歌状態の中国から、南シナ海問題の棚上げを餌に巨大な投資案件を引き出し、更にミンダナオ島産バナナの中国への輸入制裁を解除させるなど、ドゥテルテ大統領の両天秤外交の勝利とされている。
しかしながら、バナナ栽培のように広大な栽培地で単一作物を生産することは病害虫や災害に遭うと一気に壊滅。
また国際相場によっては増減も激しくこのような植民地型大規模農業は止めるべきとの指摘もある。
また、広大なバナナ農園の農薬散布による住民への影響、更に収穫時の薬品処理の影響も指摘されている。
なお、フィリピンから日本へ輸出されるバナナは2014年度統計では約82万トンになり、これは日本の全バナナ輸入量の86%を占めて1位。
2位は南米エクアドルの10%であり、いかにフィリピンがバナナ輸出に限っては日本に頼っているか分かる。
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