昨年11月にヴィサヤ中部地域を襲った台風『ヨランダ』の被災地復旧、復興に世界の眼は集中しているが、その1年前の2012年12月、南部ミンダナオ島を襲った台風『パブロ』の被災地では1年2か月を経過する現在、かなりの範囲で停電が続いていることが明らかになった。
台風パブロは死者・行方不明者2000人近く、全半壊した家屋22万棟以上、被災者620万人以上を数えた同年最大の台風で、この台風は元々台風の来ないミンダナオ島南部で盛んなバナナ農園にも打撃を与え、生産の回復は遅々として進んでいない。
停電に関しては2月24日、同地方を視察したアキノ大統領一行が明らかにしたもので、特に被害の大きかった東ダヴァオ州では、バランガイ(最小行政区)総数の6割近くに停電が続いている状態だった。
残る4割のバランガイに電気は復旧していると見るのは早計で、ヨランダの停電復旧の例にみられるように、バランガイの1世帯にでも電気が復旧すると、そのバランガイは停電復旧と数えられ、残る大多数が停電状態でも数字的にはバランガイ復旧となるトリックが使われていて、世帯数の復旧率を公表すべきとの声は高い。
東ダヴァオ州の進まない原因は同州地域に配電を行っている電力会社の復旧資金不足があり、同電力会社は配電復旧に関して、監督官庁の資源エネルギー省に資金援助を要請したが、同省からの回答は放置されたままだという。
しかし、これは同電力会社と政府側役人の責任の擦り合い、責任逃れであって、フィリピンの会社と役人の体質は同じと被災者そっちのけの事態に強い批判を浴びせられている。
視察によって実態を知ったアキノ大統領は同行した資源エネルギー庁長官らに『即刻復旧するように』との強い指示を出したが、台風ヨランダの対策も満足に遂行できない状況では、何の裏付けもない大統領の一過性のパファーマンスではないかと現地被災者は疑っている。
こういったフィリピンの被災対策は『次から次へと新しい被災に食い付く格好だけ立派。しかも他所の国からの援助頼み。もっと足元から地道に一つ一つ自前で解決を計るべき』との声は内外から高い。
【写真は台風ヨランダの被災地にて。ここは幹線道路から離れていて電気の復旧などいつになるか分からない】
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