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最高裁は9月9日、原告であるマニラ国際空港第3ターミナル【写真】を建造した企業連合に対してターミナル所有権を認め、政府側には5億1000万ドルの賠償金を支払う判決を下した。
この問題はエストラダ政権時の2001年1月に、第3ターミナルを建造するために、日本の企業を含む4ヶ国、8社が企業連合を組んで設立したフィリピン・インターナショナル・エア・ターミナル社(PIATCO)とフィリピン政府が契約。
工事は日本の竹中工務店が行い、2002年12月に仮開業する予定だった。
ところが同年11月、アロヨ政権下によって一方的に事業契約を破棄、解除されて強制収用となり98%の進捗率の状態ながら工事は中断された。
その後、PIATCOと政府はこの収用を巡って裁判闘争になっていたが、2003年5月、最高裁は契約破棄を認める政府側勝訴の判決を出した。
このため、第3ターミナルは2004年12月に強制収用されたが、止まった工事はそのままで利用客の影響など全く考えないアロヨ政権の強権が問題になっていた。
これに対してPIATCOは損害賠償請求訴訟を起こし政府側に対抗していた。
こういったゴタゴタの中、第3ターミナルは2008年7月に仮開業し、部分的に国内線用に使用するも、国際線が乗り入れるようになった全面稼働は予定から12年遅れたアキノ政権下の2014年8月で、何事も計画通りに行かないフィリピンにしても記録的な遅延で不名誉な結果となった。
今回の最高裁判決は、原告側請求額8億4600万ドルに対して、5億1000万ドルとかなり下回ったが、その内訳はターミナル自体の賠償金3億2700万ドルにターミナル収益配分による2億4300万ドルの計5億7000万ドルだったが、2006年9月に、裁判不利と見た政府側が5940万ドルを原告側に補償金として支払っていて、その分を差し引いた額になる。
今回の判決ではアロヨ政権下で任命された判事が判決文を書いていて、判決に加わった判事9人全員の賛成を得ていた。
この問題はフィリピン政府が進める官民プロジェクトに対して、理不尽に強制収用するという中国などの一党独裁国家並みの措置は、その後のフィリピンに対する民間投資の障害、不安材料にもなっていた。
なお、今もってアロヨが第3ターミナルを突然、強制収用した理由は不明で、一説にはアロヨ側が巨額な賄賂を要求、それをPIATCO側が拒絶したために腹いせに強制収用という暴挙に出たという話がある。
かつてのマルコス、またエストラダ、アロヨと続いた大統領が汚職で逮捕、この他にも大小の政治屋が獄に繋がれても当たり前の国のため、噂として捨てられない真実性がある。
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