
英名でdengue feverと呼ばれるデング熱がフィリピン国内で猛威を振っていて、フィリピン保健省は今年1月から7月下旬までのデング熱罹患者数は16万8000人弱と発表した。
この数字は2015年以降で最多を記録した2016年の8万4000人強と比べておよそ2倍の罹患者数となった。
また昨年の7万人弱と比べても2.42倍に達し、大流行の様相を示している。
このため、死者数も770人を数え、この死者数は過去5年間で最悪の記録となった。
特に7月21日~27日の1週間で、罹患者数が1万3000人弱にも達し、このままで行くと年間の罹患者数が21万6000人強を記録した昨年を上回るのは確実と見られている。
同省はデング熱の流行地域としてカヴィテ州などのカルバルソン地域、ミンドロ島、パラワン島などのミマロパ地域、ルソン島南部ビコール地域、セブを含むヴィサヤ地域、ミンダナオ島北部など10地域を挙げている。
この他首都圏とルソン島北部イロコス地域も警戒値を超えたために要注意地域とし、デング熱は地域の例外なく広がっている。
このため、同省は7月14日に史上初のデング熱全国警戒宣言を出すが、有効な手立てがない状態が続いている。
デング熱はヤブカ属のネッタイシマカなどがウィルスを伝染する疾病で、蚊に刺され感染した場合、1週間前後に発熱などの風邪に似た症状が出るが、デング熱に対する知識のない海外の観光客が帰国後に発症することも多く、同省はフィリピンを訪れる観光客にも注意を呼び掛けている。
デング熱に対しては有効な治療法と薬剤は開発されていなくて、フィリピンで死者が多く出ているのは栄養不良の子どもが全体の3分の1もあるといわれるフィリピンの環境と関係があって、体力のない子どもがや同じく老年層が犠牲になっている。
爆発的な流行を受けて、デング熱ワクチンの使用が検討されているが、一度前アキノ政権時にフランス製のワクチン接種を始めたが、接種後に子どもが死亡する事例が多発しドゥテルテ政権になって接種が撤回された。
この子どもの死亡とワクチン接種の関係は解明されていないが、同ワクチンは世界20ヶ国で使用されているため、一刻も早くデング熱ワクチン接種に踏み切るべきとの声も高く、一度は禁止に動いた大統領も容認の兆しを見せている。

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