フィリピンで一番難しい資格試験といわれる『司法試験』は昨年11月に行われ、その結果が発表され、2016年度の合格者は受験者数6344人に対して3747人という大量の合格者を出した。

この司法試験の合格率は例年20%程度で、前年度の合格率は26%台であったが、今年は60%に迫る結果となり、その異常な合格率の上昇に司法界は賛否両論が湧き上がっている。
この異常ともいえる合格率の上昇は合格判定基準を従来から落としたことから生じたもので、過去には1954年の合格率75%という記録がある。
通常なら合格に達しない人物が、基準点を下げたことによって受験者が救済されたことは確かで、今年この大量に生み出された新法曹人に対してその質、能力に対して懸念を指摘する識者もある。
司法試験の過熱ぶりは毎年合格者の『トップ10』がどこの大学から出ているかに如実に出ていて、国内マスコミはトップ・ニュースで伝えている。
今回のトップ10(同点成績もあり実質12人)の特徴は女性が多数を占めたことマニラ首都圏にある国立フィリピン大学や名門私立大学法学部出身者が、従来トップ10を多く占めていた中、今回はわずか2人しか入らず、地方の大学の健闘が目立った。
特にヴィサヤ地区は顕著で、セブ市にある世界でも最古級の大学とされる『サン・カルロス大学』からは30歳のミンダナオ島ブキドノン州出身の女性が、同大学から初めてになるトップ合格者となった。
この他3人、計4人が同大学からトップ10に入り、同時に受験者69人全員が合格するという記録を出した。
また、セブ島隣りにあるネグロス島ドマゲティ市にある、フィリピンでは珍しいプロテスタント系『シリマン大学』からもトップ10中2位に入る合格者を出し、同大学はこの他2人がトップ10に入った。
この司法試験合格数はフィリピンの教育機関の宣伝には最高の素材であり、各大学は在籍受験者に対してトップ10に入ったならば新車や賞金を与える大学が続出。
実際、シリマン大学では2位に入った学生に対して新車と4000ドルを贈呈。同時に9位と10位に入った同大学生にそれぞれ2000ドルが贈呈される。
なお、フィリピンの法曹制度は、司法試験合格者は最高裁判所の手続きを経て、実務研修無しで弁護士開業、あるいは検事任官など可能である。
【写真はセブ市ダウン・タウンにあるサン・カルロス大学の本館】
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